『会社のカタチ 定款で会社をデザインする』

どこの会社にも必ず存在する定款。平成18年の会社法改正で定款が会社の在り方を大きく左右するようになりました。金庫に眠っている定款をもう一度見直してみませんか?しながわ法務司法書士事務所の所長司法書士・新谷健太郎さんにお話を伺いました。shinntani tokusyu

  • 定款は会社の憲法

-まず司法書士の仕事を教えていただけますか?

司法書士は主に法務局に届け出る不動産や会社の登記、商業登記の申請の代理をしています。また訴訟で知的障がい者や高齢者の代理人になることもあります。メインの業務は不動産登記ですね。あとは企業法務のサポートをしています。定款を作成することもそうですし、法律の権利関係で起こる揉め事を予防する役割ですね。

-定款とはどんなものですか?

定款とは組織や運営方法など、会社のルールを定めたものです。言わば会社の憲法です。例えば会社の機関、具体的には取締役会や株主総会の運営や取締役・監査役など役員について、それから会社の商号や会社設立の目的、そして株式などについて規定しています。

-定款はどの会社も作らなければならないのでしょうか?

会社の設立登記をする際に定款は必ず必要になりますので、どの会社にも定款は存在します。しかし従来の定款は、設立登記に必要だから作成しただけで、作成した後は金庫に眠っているという存在でした。そもそも会社は会社法などの法律が定める範囲内で定款を作成し、会社運営にまつわる様々なことを自由に定めることができるのですが(これを定款自治と言います。)、これまでの法律では定款の内容が厳格に決められていたため、どこの会社も形式的に定款を作成するだけという状況に陥りがちでした。それを打開したのが平成18年5月に改正された会社法です。

  • 新会社法は定款自治を拡大した

-なぜ会社法は改正されたのでしょうか?

新会社法以前、会社は株式会社と有限会社に分けられました。両者の違いは資本金と機関、任期にあります。有限会社の資本金は300万円以上なのに対し、株式会社の資本金が1000万円以上です。また有限会社は社員総会の設置は必須ですが、後は取締役1名がいればよく、任期なども規定がありません。一方株式会社は株主総会と取締役会と監査役の設置が必須、取締役も3名以上が必要で任期の規定もあるなど、ハードルが高くなっています。しかし、日本の大多数の中小企業の株式会社は家族経営で、有限会社とは上記のような形式的な違いがあるにせよ、“会社所有者=経営者”という実態は全く変わらない会社がほとんどです。また、従来の株式会社は中小零細企業から、東京証券取引所に上場しているような大企業まで内容はさまざまなのに、すべての企業が同じ法律で法定されており実態に合っていない、規制が形骸化しているなどの問題がありました。これらの問題を解決するために会社法は改正されました。

-新会社法によってなにが変わったのでしょうか?

まず会社を新しく以下の2つにグループ分けすることになりました。

①    非公開会社(有限会社と中小の株式会社を一緒にしたグループ)

②    公開会社(大企業)

非公開会社はすべての株式の譲渡が制限されています。公開会社はそれ以外の会社を指します。さらに、非公開会社の中にも、家族で細々と経営している会社や、これからどんどん成長していくベンチャー企業、自分の代で会社を終わらせようとしている会社など、さまざまなタイプの会社がありますので、そういったさまざまな会社が自由に実態に合った会社作りをできるようになったと言えるでしょう。下で詳しくお話しますが、特に注目すべき点は以下の3つです。

①     さまざまな機関設計が自由にできるようになった。

②     さまざまな種類株式を自由に発行できるようになった。

③     定款に記載できる内容が大幅に増えた。

  • 定款を作ることはすなわち会社のカタチを決めること

-非公開会社は新会社法によって何ができるようになるのでしょうか?

まず、株主総会や取締役会などの機関設計が自由にできるようになります。株主総会は必ず設置しなくてはいけないのと、取締役が1人でもよいのは従来通りですが、最大10年までの任期が設けられました。またこれまで任意だった監査役の設置はしなくて良くなり、会計参与の設置が認められるようになりました。会計参与とは、取締役と共同で決算書を作成する税理士や公認会計士を指します。

次に、さまざまな種類株式を自由に発行できるようになりました。種類株式とは、剰余金の配当やその他の権利の内容が異なる株式のことです。新会社法では主に9種類が発行可能になりました。例えば配当をたくさんもらえたり、株主総会において否決権や人事権を持てたり、後に会社がその株式を回収できたりするわけです。これらの種類株式を駆使することによって、株式はその会社の実情に即したツールとなるのです。

最後に、定款に記載できる内容が大幅に増えました。ひとつずつ見ていくと、まず株主の権利に差がつけられるようになりました。余剰金の配当や残余財産の分配、議決権などについて、異なる規定ができるのです。これらは種類株式と同じに思えますが、種類株式が対外的に公表されてしまうのに対し、これらは定款に記載されますので、定款は外部に公表しなくていいものですから、対外的に公開したくない場合に有効です。次に、譲渡制限のついた株式について持ち主に株式の売り渡しを求めることができます。例えば相続などで望ましくない相手に株式が渡ってしまった場合などに有効です。次に、取締役、社外取締役等の賠償責任が軽くなります。また、紙ベースの株券の発行をしなくてもよくなりました。最後に、株主総会ではなく、取締役会によって剰余金の配当が議決できるようになりました。

以上のような法律で定められている内容に限らず、自由な発想でさまざまな条項を入れることもできますよ。例えば経営者の会社に対する思いをつづったり、商号や年表、経営方針など、今で言うと企業のホームページに載っているような内容を定款に記載できるようになりました。また、定款で相続人を定めておけば、相続の際に争うこともなくなるかもしれません。つまり会社法施行によって、定款自治が拡大したということは、自分の会社が今どのような状況に置かれているのかを分析し、今後どのような方向に進むべきかを常に考えていく中で、会社運営のツールとして定款を定期的に見直していく作業が必要になるということです。その過程で悩んだら、我々のような司法書士や弁護士、公認会計士などが味方になります。


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